宇都宮地方裁判所 事件番号不詳 判決
本籍並びに住居
栃木県河内郡豊岡村大字倉ケ崎三百六十六番地
農業
沼尾與兵衞
当三十九年
右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検事酒井亨関與の上審理を遂げ左の如く判決する。
主文
被告人を懲役三月及罰金五万円に処する
右罰金を完納することができないときは金百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
被告人は栃木県河内郡豊岡村大字倉ケ崎において農業を営み又同地内に山林を所有するものであるが、
第一、昭和二十二年十一月中右所有山林の立木若干宛を奧長一郞に対し代金五万円にて田村彌三郞に対し代金十二万円にて各讓渡し同年分の所得金額としては右山林讓渡により收入すべき金額から算定さるべき山林所得があつたに拘らず昭和二十三年二月十六日居村村役場経由宇都宮税務署受付を以て政府に対し右山林所得をことさらに秘匿し昭和二十二年分の農業所得のみを課税標準とする如く所要事項を記載した内容虚僞に係る同年分の所得税確定申告書を提出し以て所得金額の申告に関し詐僞の行為を為しよつて所得税法第二十六條第一項第一号に規定する同年分の所得税額の一部たる金三万三千九百五十九円相当額(右山林所得を含めて算出すべき眞実の所得税額と同年分の農業所得のみを以て算出した所得税額との差額)の所得税を免れ、
第二、昭和二十三年五月二十日前記所有山林の立木若干を兼松株式会社東京支社に対し代金五十六万円にて讓渡し同年分の所得金額としては右山林讓渡により收入すべき金額から算定さるべき山林所得があつたに拘らず同年七月中前記自宅において同年分の所得税七月予定申告書用紙に同年分の農業所得のみを課税標準とする如く所要事項を記載し以て右山林所得を秘匿した内容虚僞に係る、右申告書を作成し同月三十一日居村村役場経由宇都宮税務署受付を以てこれを政府に提出したものである。
右の事実は
一、被告人の当公廷における供述
一、証人島田邦次郞の当公廷における供述
一、被告人の昭和二十二年十一月二十六日附作成に係る山林売渡書と題する書面一通(昭和二十三年領第一号の一)の存在及びその記載
一、田村彌三郞の検事の面前における供述調書中の同人の供述記載
一、大蔵事務官の作成に係る被告人の昭和二十二年分の所得税確定申告書写一通(同領号の二)の存在及びその記載
一、同作成に係る被告人の同年分所得税確定申告更正決議書写一通(同領号の三)の存在及びその記載
一、被告人及び兼松株式会社東京支店取締役上山豊二の昭和二十三年五月二十日附共同作成に係る売買契約書と題する書面一通(同領号の四)の存在及びその記載
一、大蔵事務官の作成に係る被告人の昭和二十三年分所得税七月予定申告書写一通(同領号の五)の存在及びその記載
を綜合してこれを認める。
法律に照すと被告人の判示所為中判示第一の所為は所得税法第六十九條第一項前項、判示第二の所為は同法第七十條第一号(但しいづれも昭和二十三年法律第百七号附則第六十條に従い同法律による改正前の規定)に各該当するところいづれも犯罪後昭和二十三年法律第二百五十一号第二條第一項により刑の変更があつたから刑法第六條第十條に従い軽い右変更前の刑を以て処断すべきである。そこで前者につき情状により所得税法第六十九條第三項を適用し所定刑たる懲役及び罰金を併科し後者につき所定刑中罰金を選択することとしたが右は刑法第四十五條前段の併合罪であるから同法第四十八條第一項本文及び第二項に則り前者の懲役と後者の罰金とはこれを併科し前者及び後者の各罰金はその合算額以下において処断すべきであつてその刑期及び金額の範囲内において被告人を懲役三月及び罰金五万円に処し右罰金を完納することができないときは同法第十八條に則り金百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべきものとし情状により同法第二十五條を適用し本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予しなお訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一條第一項に従い全部これを被告人をして負担せしめることとした。
よつて主文の如く判決する。
(裁判官 駒田駿太郞)